くちびるを奪われる、という体験
言わずと知れた能登のブランド「輪島塗」・・・それは、英語でJAPANと言われるほどに日本の文化を継承してきた伝統技術です。長く伝えられてきた技術とは、ずっと同じことをやってきているようで、実は、どの時代にも技術革新があってこそ、現代にまで受け継がれています。この「ぐい呑」に出会ったとき、輪島の持つ「ものづくり」への底力というか、執念というか、そういうものを感じてしまいました。
脱乾漆のぐい呑には、木地がありません。漆だけでつくられた器は、やわらかく、あたたかく、ある日本酒ソムリエの言葉を借りるならば「くちびるを奪われた」という表現がぴったりの飲み心地。漆の語源は「麗しい」と聞いたことがあります。その色っぽさは、体験してみないと分かりません。これは、コレクターならずとも、ぜひとも手に入れたい一品です。
お酒を入れるとさらに魅力的に
このぐい呑の良いところは、まず、お酒がおいしくなるところ。ぐい呑の口当たりは、お酒の味を左右します。辛口のお酒をよりすっきりと、甘口のお酒をよりやわらかに。お酒を注いだときの器の色に注目!微妙な光の加減でお酒がレンズになって、器の輝きが変わるのです。
そして、なにより丈夫で長持ち。毎日使って100年使えるものを目指して作られています。普通の食器と同じように中性洗剤で洗えますし、ナイロンのスポンジを使っても大丈夫。少し、荒っぽい使い方をしても、それで味わいが出てくるのです。
メンテナンスしやすい漆器
輪島塗は「お直し」ができることがひとつの特徴ですが、この脱乾漆の器も、もちろん直せます。ただし、そのコストは輪島塗よりも廉価です。漆をはがして、布着せからやり直す輪島塗に比べて、すべてが漆の塊ですから、塗り直しだけで修理が完了。一般的に、お直しには、購入した値段の6割くらいがかかりますが、このぐい呑は、数千円で直しがききます。一世代だけでなく、子供や孫にまで伝えていきたい器なら、ランニングコストの安さは魅力ですよね。
末永く、ほんとうに永く残る器
「自分たちが死んでも残るものをつくりたい」それが、このぐい呑を創り出したきっかけです。たとえば、布の耐久年数は500年から600年といわれています。木も丈夫だとはいえ、いつかは風化してしまう素材です。しかし、漆は有機物の中ではもっとも安定した物質のひとつ。いわば天然樹脂の塊です。木地に漆を塗った漆器は水に浮かびますが、脱乾漆の器は、なんと陶器のように水に沈むのです。
漆だけならば、半永久的に残る。ならば、輪島塗の基本である木地や布着せをあえて除いて、漆だけの器を・・・。突拍子もないような発想ですが、その純粋なまでの「残る器」づくりへの想いが込められたぐい呑なのです。
夢は国宝をつくること
この脱乾漆のぐい呑を生み出したのは、輪島で17代続く山崖松花堂のご兄弟。兄の宗陽(そうよう)さんは蒔絵職人、弟の松堂(しょうどう)さんは、なんと手で漆を塗るという若き塗師です。このぐい呑は、お二人の創作意欲と研究の結晶です。工房には、創意工夫の足跡が所狭しと置かれています。20年間塗り続けていて、まだ完成しない作品など、アイディアと試行錯誤の山がそこにありました。
ふつうの輪島塗では、おおよそ9回、漆が塗り重ねられますが、この脱乾漆ぐい呑は100回から150回という、気の遠くなるような、塗って研いで・・・が繰り返されます。使う漆の量も30倍にもなります。
これまで誰もやらなかったような漆器を生み出したお二人の夢は「国宝」をつくること。そう語る二人の目は、新たな漆の世界を拓くため、アグレッシブに攻めていく戦士のようでした。
商品名 | 脱乾漆ぐい呑 八角不二山 |
寸法 | φ62mm×36mm |
備考 | ひとつひとつ手づくりのため、商品画像と色が多少異なる場合があります。 また、桐箱を選択された場合は、お届けまでに少々お時間がかかる場合がございます。あらかじめご了承下さい。 |
製造者 | 山崖松花堂 〒928-0071 輪島市輪島崎町3-46 0768-22-0003 |